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2026.02.13
【コラム】従業員満足度調査 実施結果について
経営者向け コラム・インタビュー 経営・マネジメント OCVBからのお知らせ
観光業界の未来を創る「人が輝き続ける」組織づくり
― 観光業従事者満足度調査から考える人的資本経営 ―
沖縄の観光業界は今、人材不足や若年層の早期離職といった課題を抱え、大きな転換点に立っています。こうした状況を受け、令和6年度に続き、令和7年度も、県内観光業従事者の現状や課題、現場の声を丁寧に把握し、今後の施策展開につなげていくことを目的として、「観光業従事者を対象とした従業員満足度調査」が実施されました。
本調査は、現場で感覚的に語られてきた課題を改めて言語化しています。そして同時に、これからの観光業界がどこへ向かうのかを考えるための材料を私たちに投げかけています。この結果を、単なる厳しい現実として受け止めるのではなく、従業員一人ひとりが納得感を持って働き続けられる業界へと舵を切るための、重要な示唆が詰まった調査だと感じています。
組織開発コンサルタントとして、観光業を含む県内企業を伴走してきた経験を踏まえ、今回の調査結果から、人材定着と人材確保につながる組織づくりの視点を考察します。
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調査結果から見える、人材定着を左右する本質的な要因
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今回の調査で、観光業従事者が業界や勤務先を決定する上で重視している項目の上位には、「職場の人間関係や信頼関係(75.0%)」、次いで「待遇(給与・賞与など)(71.1%)」が挙げられました。
観光業はチームワークが欠かせない仕事であり、人との関わりが仕事の質ややりがいに直結することが、改めて数字として示されたと言えるでしょう。
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一方、現在の仕事(勤務先)に対する満足度の結果を見ると、「職場の人間関係や信頼関係」や「働き方の柔軟性」には一定の評価があるものの、
「待遇(給与・賞与など)」
「能力開発・研修制度」
「評価の妥当性(人事評価など)」
といった項目では満足度が低い結果となっています。
また、勤続意向に関する設問で注目されるのは、20代以下の勤続意向が69%と、他世代と比べて最も低い点です。若手人材ほど、「この職場、この業界で成長し続けられるのか」「数年後の自分が想像できるのか」といった不安を強く感じている様子がうかがえます。
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給与を上げれば人は定着すると考えがちですが、調査結果はそれだけでは不十分であることを表しています。
現在の職場で働き続けたくない理由の第1位は「給与の低さ(64.2%)」に続いて、第2位には「長期的なキャリアビジョンが見えない(53.7%)」が挙げられています。
つまり、多くの現場では「今を回す」ことに追われるあまり、将来に向けた成長やキャリア形成の対話が置き去りにされていると考えられます。 先行きが不透明なVUCA(※)の時代において、働く人は会社に依存するのではなく、会社との関係性の中で「自らのキャリアをどう築いていけるか」を重視しています。
この変化に応えられるかどうかが、人材定着の分かれ道となっています。
(※)社会や経済の変化が激しく、将来の予測が難しい状況を指す言葉。不確実性が高まる中で、個人も組織も柔軟に変化し続けることが求められている。
「個の自律」と「組織の成長」を両立させる人的資本経営へのシフト
では、具体的に何から手をつければよいのでしょうか。
私は、観光業界こそ「個の自律」と「組織の成長」を両立させる人的資本経営へのシフトが求められていると考えています。
これは、従来の「人材を囲い込む」「辞めさせないための施策」から脱却し、組織と個人が互いに選び・選ばれる関係を築くという考え方です。
そのために、優先的に取り組みたいのが次の3つです。
① 事業戦略と連動した体系的な人材育成・キャリア設計
まず着手すべきは、「この組織で働くことで、どんな成長ができるのか」を言語化することです。
調査結果では、「能力開発・研修制度」に対する満足度の低さが示されています。研修自体は行われているものの、「それが自分の成長や将来にどうつながるのかが見えにくい」という声を耳にすることも少なくありません。
ここでは、人事担当者だけでなく、経営層・管理職も一緒になって「どんな人材に育ってほしいのか」を描くことが欠かせません。
例えば、現場リーダー、専門職、マネジメントなど、複数のキャリアパスを可視化し、それぞれに必要なスキルや経験を整理します。その上で、OJT・研修・外部学習などを組み合わせ、段階的な育成の道筋をつくります。

個人にとっては「この会社でどんな成長ができるのか」が見え、組織にとっては「将来を支える人材が育つ」仕組みになります。これこそが、個と組織の成長を結びつけるキャリアデザインです。
そして、こうした育成やキャリアの道筋は、制度として整えるだけでは十分に機能しません。重要なのは、日常のやり取りの中で、育成やキャリアを意識した話題が交わされているかどうかです。
例えば、上司と部下の間で、整えた制度や育成の考え方を踏まえながら、
「将来どんな役割を担っていきたいか」
「どの分野の専門性を高めたいか」
といった視点で対話を重ねることが大切です。
忙しい現場ほど、「今の仕事」だけの話になりがちですが、だからこそ意識的に「これから」の話をする時間を確保することが主体的なキャリア設計につながっていきます。
② 評価基準の明確化と管理職による継続的なフィードバック
キャリアの方向性が見えてきた次に必要となるのが、その成長が正しく認められているという実感です。
調査結果では、勤続意向が低い層ほど「評価の妥当性」に対する不満が強い傾向が見られました。
「何を頑張れば評価されるのか分からない」 「上司の主観で決まっている気がする」
ーこうした不透明感は、若手ほどモチベーションを下げ、離職につながります。
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まず取り組むべきは、人事担当者が中心となって評価基準を整理・言語化し、それを管理職と共有することです。

重要なのは評価表を作ること自体ではなく、「どんな行動や姿勢が、組織として価値があるのか」を共通言語にすること。そして管理職が、日常の1on1や面談を通じて、成長の方向性を具体的にフィードバックすることです。
評価は年1回のイベントではなく、日常の対話の積み重ねであるという意識の転換が、信頼関係の土台となります。
③ 対話を基盤とした現場力を高める組織文化の醸成
個人の成長やキャリアを支える土台が整ってきたからこそ、次はその力を現場全体で育てていく視点が求められます。個人任せの成長には限界があります。
人材定着のカギは、現場同士が学び合い対話をすることにより、改善を重ねる文化を育てられるかどうかにあります。
具体的には、定例ミーティングやワークショップ等を活用し、日々の業務改善や、お客様との関わりの中で生まれた気づきを共有する場を設けること。トップダウンではなく「現場をより良くするために何ができるか」を共に考えるプロセスが重要です。
この場づくりには、管理職のファシリテーション力が大きく影響します。人事が設計し、管理職が実践するという役割分担を明確にすることで、対話は文化として根づいていきます。

対話というと「和気あいあいと話す場」を想像されがちですが、本来の対話は、現場で起きている違和感や課題を早い段階で言葉にし、共有するためのものです。こうした対話が日常的に行われない組織では、小さな不満やズレが見過ごされ、やがて離職という形で表面化してしまいます。
現場からはよく、「忙しくて対話の時間が取れない」という声が聞かれます。しかし、対話とは必ずしも長時間の会議や特別な場を意味するものではありません。例えば、業務後の5分間で「今日うまくいったこと」「現場で気になったこと」を共有するだけでも、現場の空気は少しずつ変わっていきます。
対話が生まれることで、個人の違和感が部署や組織としての問いへと置き換えられ、「誰かの不満」ではなく「みんなで向き合う課題」になります。この小さな積み重ねが、失敗や意見の違いを恐れずに話せる心理的安全性を育み、結果として人が定着し、挑戦が生まれる組織文化へとつながっていくのです。
人が定着する会社は、人を惹きつける会社になる
これらの取り組みを実践している企業では、「ここで働き続けたい」と感じる従業員が着実に増えていきます。
実際に県内中小企業のA社では、育成の仕組みづくりと対話を基盤とした場づくりを優先的に進めた結果、離職率が低下し、それに伴い売上・利益も飛躍的に向上しました。こうした変化は、特別な資源や大規模投資がなくても、優先順位と関わり方を変えることで実現可能です。重要なのは、人の問題を後回しにしないという経営の意思です。
人が定着する会社は、外から見ると「人が活躍している会社」です。現場でいきいきと働く従業員の姿こそが何よりの採用ブランディングとなり、新たな人材を引き寄せる力になります。
そのような状態は自然に生まれるものではありません。
観光業は、忙しさや人手不足を理由に、戦略的な人材育成や職場内での対話が後回しにされやすい業界でもあります。しかし、その積み重ねが離職を招き、結果として現場の負担がさらに高まるという負の連鎖が生じやすくなります。この流れを変えていくためには、経営層や管理職が、従業員一人ひとりの声に耳を傾け、共に未来を描こうとする姿勢が欠かせません。
今回の調査結果を「厳しい現実」と捉えるか、「変化のヒント」と捉えるか。その選択が、数年後の組織の姿を大きく左右するでしょう。人を大切にする組織づくりの積み重ねが、働く人の定着と成長を支え、ひいては沖縄観光の持続的な発展へとつながっていくと期待しています。
OCVBコーポレートサイトでは本調査の公表結果全文を掲載しております。下記よりご閲覧ください。
本サイトでは県内の観光関連事業者に向け、様々な情報を発信しております。県内の支援情報や講師検索に是非ご活用ください。
また従来の機能に加え、令和7年12月より「人事課題セルフ診断」を新しく導入いたしました。「定着・育成・確保」それぞれの側面から現状の取り組み度合を診断し、診断結果に応じたお役立ち情報や研修講師をご案内します。
サイトご利用の前に是非一度ご活用くださいませ。
【本記事に関するお問い合わせ】
OCVB国内事業部 受入推進課 観光人材育成センター
TEL:098-859-6129 MAIL:ikusei@ocvb.or.jp